JIS K 7317:2022 は、プラスチックの機能性フィルムの引っかき硬さを、規定された圧子、荷重、速度および判定方法によって評価する日本産業規格です。光学フィルム・ハードコート・ディスプレイ用フィルムなどの表面硬さ評価の試験条件を標準化する規格として 2022 年に制定され、同一条件での比較評価に利用できます。本記事では規格の概要、試験方法、試験機選定のポイントを解説します。
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JIS K 7317:2022 とは
JIS K 7317:2022 は、正式名称「プラスチック-機能性フィルムの引っかき硬さの求め方」(Plastics — Determination of scratch hardness of specialty films)として 2022 年に制定された日本産業規格です。
機能性フィルムの表面硬さ評価には、従来 JIS K 5600-5-4「塗料一般試験方法 ひっかき硬度(鉛筆法)」が流用されてきました。しかし、もともと塗料の塗膜評価用に作られた規格であるため、機能性フィルムの評価に用いると以下の課題があります。
- 鉛筆芯の形状が測定とともに変化し、再現性が確保しにくい
- 目視判定にばらつきが生じる
- 商取引における判定基準としては、定量性・再現性の面で課題が指摘されていた
こうした背景から、機能性フィルム業界の要望を受け、より定量的で再現性の高い試験方法として JIS K 7317:2022 が制定されました。
機能性フィルムとは
機能性フィルムとは、特定の機能(光学的・電気的・保護的など)を付与したプラスチックフィルムの総称です。代表的な用途として以下が挙げられます。
- ディスプレイ用ハードコートフィルム
- 光学フィルム(偏光板、反射防止フィルムなど)
- 電池セパレータフィルム
- 包装用バリアフィルム
- 太陽電池用フィルム
これらは電子・電気、自動車、ディスプレイ、包装、医療、航空宇宙など幅広い産業で使用され、表面の耐傷性・硬度が品質に直結します。日本メーカーが世界市場の大きなシェアを占める分野でもあり、品質保証のためにも標準化された試験方法が求められていました。
JIS K 7317:2022 の試験方法
JIS K 7317:2022 では、ダイヤモンド圧子による引っかき試験を行い、きずが目視で確認されない最大荷重で評価します。具体的な照明、観察方法、試験回数および判定手順は規格原文に従ってください。試験機の構成・条件は以下の通り規定されています。
① 圧子
材質は変形しにくく耐久性のあるダイヤモンドとし、先端の球半径は 0.10 mm ± 0.01 mm と規定されています。規格制定時には複数の球半径が比較検討されたとされ、以下のような知見が紹介されています。
- 0.05 mm:圧子先端に力が集中し、小さい荷重で表面にきずが付くため、軟質材料には不向き
- 0.5 mm・1.0 mm:応力が分散し、表面のきずの見やすさが低下、結果のばらつきの要因となる
- 0.2 mm:0.1 mm に比べて接触面積が大きく応力が分散するため、ばらつきが大きくなる
これらの検討を踏まえて、0.10 mm ± 0.01 mm が採用されました。
② 試験速度
試験速度は 1.5 mm/s ~ 2.0 mm/s と規定されています。試験速度が遅すぎると、きずが付きやすくなり、結果に影響します。規格制定時の検討では、1.5~2.0 mm/s の範囲では引っかき硬さに有意差が認められなかったとされ、既存の JIS K 5600-5-4(鉛筆法、0.5~1.0 mm/s)との整合性も考慮してこの範囲が採用されました。
③ 目視判定方法
JIS K 7317:2022 では、きずの検知を「引っかき操作によってきずを付した試験片に反射光を当てたとき、きずのある箇所で起こる屈折および散乱による反射光の変化」によって行うとしています。判定方法は以下の複数が認められています。
- 明室(蛍光灯または LED 照明)下での目視判定
- 観察用暗箱を使用した目視判定
- 目視判定ジグ(ハーフミラーを用いた同軸落射反射光学系)の使用
- フィルムの光学式表面検査装置(欠点検出機)の使用
いずれの方法も、屈折・散乱による反射光の変化を検知するという原理は共通です。規格制定時の検討では、各方法の判定結果に大きな差は生じないとされています。
JIS K 7317:2022 と鉛筆法(JIS K 5600-5-4)の違い
| JIS K 7317:2022 | JIS K 5600-5-4(鉛筆法) | |
|---|---|---|
| 主な対象 | プラスチック機能性フィルム | 塗料の塗膜 |
| 圧子 | ダイヤモンド、球半径 0.10 mm ± 0.01 mm | 鉛筆(HB、H、2H など) |
| 試験速度 | 1.5 ~ 2.0 mm/s | 0.5 ~ 1.0 mm/s |
| 判定基準 | きずが目視で確認されない最大荷重 [g] | 鉛筆硬度(HB ~ H など) |
| 再現性 | 圧子形状の変化が小さく、再現性を確保しやすい | 鉛筆芯の摩耗により変動しやすい |
JIS K 5600-5-4(鉛筆法)は今後も塗膜の試験方法として有効ですが、機能性フィルムの評価には JIS K 7317:2022 が新しい標準となります。
試験機選定の重要ポイント:軸感度
JIS K 7317:2022 への対応試験機を選定する際、最も注意すべきは 低荷重領域での軸感度(試験荷重の応答性)です。
JIS K 7317:2022 は 10 g からの低荷重で試験を行うため、試験機の軸感度が測定結果を大きく左右します。軸感度が低い試験機では、10 g 単位の荷重差を正しく試験片に反映できず、判定結果に誤差を生じる恐れがあります。
特に注意したいのが、鉛筆硬度試験(JIS K 5600-5-4)用に設計された試験機です。鉛筆硬度試験は数百 g 単位の荷重を扱うため、必ずしも 10 g 単位の微小荷重差を識別できる軸感度を備えているとは限りません。同じ試験機で JIS K 7317:2022 試験を行おうとした場合、低荷重領域での精度不足により、本来評価できるはずの差が測定できないケースがあります。
HEIDON の試験機は、低荷重領域での高い軸感度を確保し、10 g 単位の試験荷重設定に対応できるよう設計されています。なお、対応可否を判断する際は、荷重設定能力だけでなく、圧子、速度、試験片保持、観察・判定方法を含め、規格が要求する試験条件全体を確認することが重要です。
HEIDON の JIS K 7317:2022 対応機種
HEIDON では、JIS K 7317:2022 専用機をはじめ、複数の機種で同規格に対応しています。
専用機:スチールウール耐久試験機 TYPE:38F
JIS K 7317:2022 に準拠した試験を行うために設計された機種です。規定のダイヤモンド圧子(球半径 0.10 mm ± 0.01 mm)、規定試験速度(1.5 ~ 2.0 mm/s)、低荷重領域での高い軸感度を備えています。
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同規格に対応可能な機種
以下の機種でも、適切な治具と圧子の選定により JIS K 7317:2022 試験に対応可能です。
ご使用のトライボギアが対応可能かはお問い合わせください。
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JIS K 7317:2022 試験のご相談
機種選定・試験条件の決定・受託試験など、JIS K 7317:2022 試験に関するご相談は HEIDON までお気軽にお問い合わせください。
※本記事の規格に関する記載は概要の紹介です。試験を実施する際は、JIS K 7317:2022 の規格原文をご確認ください。2026年7月、技術内容および規格情報を見直し、加筆修正しました。